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NCAA選抜vs
全日本学生選抜 試合前の状況 大興奮の初日から一夜明けた。初日に「もし一方的な展開になってしまったら」「1セットで双方の持ち味が十分発揮されなかったら」「観客が入らなかったら・・・」等々イベント主催者としての様々な不安は、ふたを開けてみれば全て杞憂に終わった。出来過ぎとも言える大成功に我々裏方は大いに満悦していた。2日目は「昨日より冷静に観戦できる。もはや勝敗はあまり気にならない。運営業務にも専念できる」とやや余裕の朝を迎えていた。確かに初日よりは観戦・応援に費やす時間は減った。しかし2日目もいつしか手に汗握る大熱戦の渦に巻き込まれて行った。 開会式前、ホテルの送迎バスを降り、「USA! USA!」と歌いお互いを鼓舞しながら、有明コロシアムに乗り込むNCAAチームの姿が目撃された。明るい中にも緊迫感が漂う。早稲田一校相手に大苦戦し、全日本選抜を迎え打つ決戦の朝。負けたら母国に帰れない。今日こそ本当の力を見せてやろう。そんな張り詰めた空気。観客の出足も昨日以上に好調だった。入場者数は初日1825人,2日目2471人とのことだった。2日目は、在日米人も多く詰め掛け朝から会場は熱気に包まれた。気を引き締め直した全米選抜と全日本選抜との真剣勝負が始まった。
長期戦になった昨日の反省から6ゲーム1セットマッチ方式が採用された。総合優勝は総ゲーム数ではなく7試合の勝敗数で決定する。試合の順序もメインのシングルスをゴールデンタイムに配置し、時間切れになる場合も想定してミックスダブルス(早稲田ペア)を最終第7試合に回した。このミックスがドラマのクライマックスにつながるとはこの時点では誰も予想できなかった。 慶応の野沢は最近めきめきと頭角を表している。豪快なストロークが特徴だ。長年のライバル慶応の選手が記念イベントに参加してくれたことは早稲田としても大変喜ばしかった。開始早々、野沢のサービスで40-0。順調な滑り出しだ。おや?Kops-Jonesの動きが固い。まだ昨日のショックを引きずっているのか?ところが野沢はうかつにも40-40に追いつかれると何度かDuceの末とうとうこのゲームをブレークされてしまった。以降完全に流れを掴んだMiss.Perfect=Jones。ペースを掴めずあせる野沢選手。一方的な展開になってしまった。初日には杞憂に終わった不安が2日目にとうとう現実になってしまった。 畠中将人(法政)6−3Todd Widom(Univ. of Miami) NCAAの逆襲の前に全日本選抜は総崩れになるのか? いやな流れを食い止めたヒーローは法政の畠中だ。序盤はWidomのパワーに圧倒され苦しい展開だったが、小柄な畠中は我慢強くサービスをキープした。中盤、激しいラリーの応酬を素晴らしいフットワークで凌いで競り勝つと観客の大喝采を浴びた。駆け付けた法政の同僚たちの熱烈なエールにも後押しされ畠中は一気に波に乗り、Widomのサービスをブレークした。盛り上がるコロシアム。Widomは昨日に続く悔しい連敗。 松井小麦(筑波)7−6(4)Amber Liu(Stanford) 日米1勝1敗で注目の男女シングルスNO.1対決に突入した。終始主導権を握っていたのは全米学生王者Liuだった。打ち合いではLiuの強烈なフォアが松井を圧倒し、松井は防戦一方に見えた。しかし松井も畠中同様よく耐えた。左右に振り回されながらも粘り強く返球し続けた。Liuの表情にあせりと苛立ちが浮かぶ。自分の方が押し気味なのになかなか突き放すことができない。昨日の敗戦のショックを多少引きずっているのか落ち着きがない。得意のフォアの打球も微妙にはずれてミスにつながる。しかも大切なポイントで。早稲田の学生の声援「小麦ちゃん!」コールにも支えられ松井はLiuの猛攻を凌いだ。そしてとうとう全米学生女子チャンピオンは不本意な敗北を喫してしまった。 宮崎雅俊(早稲田)7−5Amer Delic(Univ. of Illinoi) とうとう来た。全米学生男子チャンピオンも陥落する時が。宮崎雅俊はやはり怪物だ。日本人屈指の暴力的破壊力。全米学生王者にも通用するかどうか戦前は疑問だった。AmerDelicは昨日単複無傷の2勝で磐石の構えだ。序盤Delicの爆弾サービスは相変わらず絶好調。ストロークもネットプレーも完璧で圧倒的な迫力だ。対する宮崎も序盤サービスは良かったが、リターンも打ち合いでもDelicのスピードにタイミングが合っていない。中盤はDelicのペースだった。豪快なサービスとネットプレーで簡単にキープする。対する宮崎はサービスの確率も落ち、キープするのに苦労している。動きも固く足を滑らす場面も。あわやブレークされそうな場面さえもあった。しかし彼の本当の武器はパワーだけではなかった。大観衆の声援を味方につけ緊張感を自身のエネルギーに変えてしまうスーパースターの才能だ。互いにサービスをキープして迎えた終盤、宮崎のストロークのタイミングが合ってきた。宮崎の球威に押されDelicのボレーのコースがそれた。Delicのフォアの打球もコントロールを失い大きくアウトした。Delicが悔しさをあらわにした。自身の不注意に対する怒りか、理不尽にも力負けした屈辱を噛み締めていたのか。宮崎に敗れる者に共通する表情だ。これはいけるぞ!5−5でDelicのサービスをブレーク。千両役者・宮崎が勝機を掴んだ。とうとう全米学生男子チャンピオンにも土が着いた。試合終了後、DelicもBaylissコーチも宮崎に握手を求め、宮崎のプレーを称えていた。
波形純理(早稲田)細川雅代(筑波)5−7 男女の全米チャンピオンが揃ってまさかの敗北を喫して1勝3敗。NCAAにとって最悪の展開にストップをかけたのはまたしてもKeiko Tokudaだった。一進一退のシーソーゲーム。前半最初にサービスを落としたのは波形だった。しかし中盤日本ペア=かつてのインターハイ優勝ペアが盛り返した。しかし最後にKeiko Tokudaの踏ん張りがNCAAに勝利をもたらした。勝負所での効果的なストレートのパスが印象的だった。
宮尾祥治(早稲田)宮崎靖雄(亜細亜)3−6 この試合には本大会で最もハイレベルな試合内容が期待された。サービスこそNCAA優位だが、総合力では十分互角の展開も期待された。サウスポーの宮崎(亜大)はサービスもネットプレーも素晴らしい。攻撃力と安定感を兼ね備えている。パワフルな宮尾とのペアは卓越している。しかし問題は立ち上がりだった。宮崎は最初のサービスゲームをミスにより落としてしまった。対するNCAA最強ペアは、強烈サーブと高い壁のようなネットプレーで、ブレークの隙を与えなかった。6−6タイブレークが見れず残念だった。
金山敦思(早稲田)・大見映理(早稲田)5−7 時間切れでカットすることも想定して最後に回された早稲田ペアのミックスダブルス。それが3勝3敗の最後のクライマックスの場面を迎えることになろうとは。序盤まずFrutteroが簡単にサービスをキープした。続いて金山も簡単にサービスキープ。金山のリズムがいい。問題はKeiko Tokudaと大見のサービスゲームだ。注目の第3ゲーム、さすがのKeiko Tokudaも金山・大見のプレッシャーからかダブルフォルトを犯し、サービスダウン。続いてサウスポー大見のサービスゲーム。DuceサイドでFrutteroのフォアへサービスエース。完璧なオンライン。Frutteroは一歩も動けず場内の時間が止まった。フォルトのコールがないことを確認してからFrutteroは次のポイントの構えに入り、観客から大喝采が沸き起こる。通常こんな大舞台では入るサーブも入らなくなるものだ。しかも仁王立ちするFrutteroのフォアに。ド根性か鍛錬の賜物か。大見にしか出来ない神業でサービスをキープした。金山・大見優勢のまま互いにサービスキープが続いた後の第7ゲーム、大見はまたしてもFrutteroからサービスエースを奪う。全く同じコース。またもFrutteroは一歩も動けず場内の時間が止まった。そして大喝采。これこそが彼女の真骨頂だ。これには誰もが降参だ。「この一球」の言葉が思い浮かぶ。大見はまたもサービスをキープした。しかし最後に不安が的中した。終盤、大見のチグハグなネットプレーの難をKeiko Tokudaが見破ったのだ。5−4リードで金山のサービス。明らかにNCAAは大見に狙いを定めてきた。あわててミスする大見。金山も動揺してリズムを崩す。一度はマッチポイントを握ったが結局キープできなかった。土壇場でNCAAが逆転に成功した。 皮肉なことに、2日間ただ一人無傷の3勝をあげ、要所を締めて米国の名誉を守ったのは、Stanfordの徳田慶子であった。見事な集中力だった。 閉幕 立派な会場施設・運営と4000人を超す大観衆、悪夢のような大熱戦、試合終了後の手厚いもてなし。ハードスケジュールには多少疲れたかも知れないが、NCAAメンバーには強烈な思い出になったことだろう。きっと宮崎・宮尾・金山・大見・波形・荒川といった日本人選手の資質の高さには驚いたに違いない。そして日本にこんなに素晴らしい大学テニスチームがあったのかと。一方、日本勢にとってはDelic,Frutteroらのビッグサーブの印象が強いが、NCAA勢のネットプレーや軌道修正能力も目を引いた。彼らは技術、戦術、スポーツマンシップ等、パワー以外の色々な面でも貴重な教訓を示してくれたのではないか? 早稲田100周年記念イベントは日米の友好・交流にも大きな足跡を残して閉幕した。 Reception かくして夢の競演初日は幕を閉じた。お台場Aqua Cityに移動して総勢200名の盛大なレセプションパーティ。双方健闘を称えて和気あいあいの盛り上がり。私達は思った「NCAAは勘違いしていたかも知れない。初日の早稲田戦は前座で2日目の全日本選抜がメインイベントだと。実際は早稲田がメインで全日本はおまけみたいなもの。早稲田はモチベーションが高いが全日本は言わばゲスト。明日、NCAAが気を引き締めて全日本選抜に臨めば、無防備な全日本選抜は総崩れかもしれない」と。 しかしそれは間違いだった。2日目もいつの間にか激戦へともつれ込んで行く。そして早稲田の選手がまたも快挙を成し遂げる。
text=松本 浩(S61卒OB) |
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